2008年、アジア王者崩壊の真実(下)
2009年2月26日

2008年の惨敗した浦和レッズを描いたノンフィクション「浦和レッズ敗戦記」。著者である小齋秀樹さんからは、「単純な悪者」や「分かりやすいだけの原因」を書かない真面目さが感じられた。 (インタビュー・構成:黄慈権)
【浦和レッズは、すごく「もったいないチーム」】
‐‐単純な原因が出てこない「浦和レッズ敗戦記」ですが、小さな反省がいっぱい出てきますよね。チームがかみ合わないいくつもの要因と言うのでしょうか?
小齋○実際、ある「A」という原因でチームの崩壊を証明できるかなと思い、取材を続けていると、「A」に対する反証みたいなことがいっぱい出てきました。いろんなことを知ったり、情報を得たりすると、また違った原因が出てきて、検証をする。そういうことの繰り返しでした。
‐‐たしかに、チームという「生き物」がうまく行かない原因を、単純に言い表せるはずがありません。この本の中に、闘莉王選手とエンゲルス監督の「蜜月」部分も多く描かれているが、それが敗因なわけではありませんしね。ただ一つ、「浦和レッズ敗戦記」で確実に分かるのが、「チームがかみ合っていない」ということでした。
小齋○浦和レッズは、すごく「もったいないチーム」ですからね。クオリティの高い選手が揃っているし、意識も高い。ただ難しいことに、シーズン中、サッカーを変えることはあのチームはできないんです。
サッカーのやり方を変える。たとえば「4バックにして人もボールも動くサッカーをする」となると、2ヶ月はかかります。「この2ヶ月間勝てないかもしれません」ってあのサポーターには言えないですよ。もちろん、そういうアナウンスをするクラブはないですけど、結果的にそういうことをするクラブはあります。たとえば、去年の浦和の目標が残留でいいのであれば、それもできたでしょう。けれど、それを許される環境にはなかった。
選手自身が優勝したいと思っているし、クラブも思っているし、サポーターもして欲しいと思っている。メディアもレッズの優勝を煽ることがあるから、3連敗とかで叩いたりする。
「何かを積み上げ、回り道をしても良いものを作り出していく」っていう余裕は与えられていなかった。だからこそゲルトさんを単純に悪者にすることもできなかったんです。
【オフトさんが来たときに似ていますね】
‐‐なるほど。さて、浦和レッズ敗戦記の最期ですが、背番号9の空位と、新監督フィンケの就任で終わっております。これまでの反省点を踏まえると、今年の浦和レッズはどうなると思いますか?
小齋○まだ、始動したばかりですので、何も言えませんが、オフトさんが来たときに似ていますね。あのとき、たしか「3年後にリアリティーを持って、優勝を狙えるチーム作りをする」と当時の社長さんは言っていました。そういう「回り道」の雰囲気が、今年はあります。ただ、状況はかなり違います。あのときは、オフトさんが来て、初めてナビスコカップの決勝に進みましたが、今のチームはすでに勝利の美酒を味わっている。
だからこそ新しいサッカーをして、最初の5試合くらいで躓くと、その後どうなるかは分かりませんね。もちろん、仮に躓いたとしても、昨年のようなダンゴレースになって優勝する可能性だってあります。
‐‐だとすると、「浦和レッズ戦勝記」は今年発売される可能性がありますか?
小齋○3年後になるか、5年後になるのか、あるいは今年出せるのか、今のところ分かりませんし、それにタイトルも「戦勝記」になるのかも分かりません(笑)。
ただ、そういったものは必ず出したいと思っていますよ。

小齋秀樹
1970年仙台生まれ。早稲田大学法学部卒業。編集プロダクション勤務を経て、フリーランスに。98年『Numberスポーツノンフィクション新人賞』に応募した原稿が編集部の目に止まり、以後、同誌を中心に執筆活動を行なう。01年『Goalへ----浦和レッズと小野伸二』(文藝春秋)を上梓。05年から浦和レッズ・オフィシャル・マッチデー・プログラムで「FORESIGHT」を連載中。
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