主審に求められる「クリエイティブさ」
2010年4月 2日
とかくファウルの多さを指摘されている今年のJリーグ。個人的に現場とTVでここまで行われた全試合をチェックしている中で、確かに1節、2節はファウルを取り過ぎる傾向が強かったように感じますが、徐々に落ち着いてきたような印象を持っていました。
そこで、今回はJ1、J2各節の1試合平均FK数を調べてみました。数字は以下の通りです。
J1第1節 42.6本
最多FK数:55 神戸×京都 扇谷健司主審
最少FK数:29 磐田×仙台 松村和彦主審
J1第2節 42.0本
最多FK数:57 名古屋×川崎 佐藤隆治主審
最少FK数:25 新潟×磐田 奥谷彰男主審
J1第3節 37.9本
最多FK数:52 名古屋×磐田 井上知大主審
最少FK数:30 京都×仙台 吉田寿光主審
J1第4節 36.5本 (※8試合開催)
最多FK数:48 神戸×横浜FM 松尾一主審
最少FK数:27 鹿島×山形 奥谷彰男主審
J2第1節 49.3本
最多FK数:58 岐阜×富山 山内宏志主審
最少FK数:38 柏×大分 村上伸次主審
J2第2節 47.6本
最多FK数:53 栃木×柏 山本雄大主審
最少FK数:35 千葉×鳥栖 木村博之主審
J2第3節 44.0本
最多FK数:53 柏×福岡 木村博之主審
最少FK数:37 北九州×東京V 山内宏志主審
J2第4節 43.3本
最多FK数:49 東京V×柏 扇谷健司主審、千葉×草津 東城穣主審
最少FK数:35 水戸×北九州 早川一行主審
J1、J2共に第1節と第4節を比較すると、平均で6本くらいは少なくなっています。やはり確実にFK数は減少してきていたんですねえ。
ちょっと面白いなあと思うのは、J2の各節最多と最少を山内宏志主審と、木村博之主審がそれぞれ記録していること。もちろん試合の展開によって荒れる荒れないというのはあると思うんですけど、試合によって20本近くFKの数に差があるということから、審判の皆さんも今年の判定基準に戸惑っている部分が少なからずあるのではないかとは考えられないでしょうか。
J1とJ2のFK数に違いがあるというのも興味深い部分です。J1と比較した場合、J2の方が、多少技術面の低さであったり、判断面の遅さがあるのは否めず、それによって結果的に守備側がファウルで止めざるを得ないシーンというのはあると思います。今年、J1のG大阪からJ2の横浜FCに移籍してきた寺田紳一も、J1とJ2の違いを聞かれて「J2の方が荒く感じます」と話していました。
ただ、それ以上に大きいと私が思うのは、やはりJ2を担当している審判の方々は、将来的にJ1の試合で笛を吹きたいという目標であり希望を持っているはずだということ。そうなれば、今年の基準として指し示されたものを遵守して、「今年の基準通りの判定をきっちり行っている」という評価を得ようとする気持ちが出てくるのは、ある意味で仕方がないことだと思うんです。結果、どうしてもファウルをしっかり取る回数が増えてしまうのかなあと。
また、J1を担当する回数の多い主審はJ2のゲームを担当する時の方がFKを多く取っているというのも1つの傾向として言えそうです。
1つ追記しておきたいのは、Jリーグの公式記録にはオフサイド数も明記されていますが、FK数にはそのオフサイドによる間接FKの数字も加算されているということ。実際に記録を見ると、そこまでオフサイドが極端に多い試合というのはないものの、例えばフィリッポ・インザーギみたいな選手がいるチームといないチームの試合だったら、多少の差は出てくるかもしれませんね。
なお、ここまでの4節で3試合以上を担当した主審の1試合平均FK数は以下の通りです。
吉田寿光主審:36.5 村上伸次主審:37.5 岡田正義主審:38
家本政明主審:39.3 扇谷健司主審:44.8 佐藤隆司主審:45
木村博之主審:45 松尾一主審:46.7 東城穣主審:47
井上知弘主審:52.7
あとは、やはり手を使ったファウルを見極めることに重点が置かれるあまり、アドバンテージの適用に影響が出ているように感じます。
個人的には、審判の方にとって凄く必要な能力の1つに“クリエイティブさ”というのがあると思うんです。プレーありきなので、創造力というより想像力ではあるのですが、「このプレーでファウルを取るより、このまま流した方がいいプレーに繋がる」というのは、一定以上に試合の流れを見る目や、その後の展開を感じる目、というのが必要になってくる訳で、それがファウルの判定自体に囚われ過ぎることで、その後の展開を考えるより、「それは手を使ったファウルですよ」というジャッジを下すことに重きが置かれてしまっては本末転倒のような気がするし、何より安易なホイッスルによって思考停止することで、“クリエイティブさ”がどんどん失われていくような不安も拭えません。
審判が“クリエイティブさ”を発揮し、観客の意図を超えて選手とシンクロしたプレーをアドバンテージなどで演出すれば、審判に対する見方もグッとポジティブなものになっていくはずです。
実際審判をされている方とお話する機会もあり、ワールドカップで主審を務められた上川徹さんも「FKの得意な選手がいるというインフォメーションがあれば、アドバンテージを見るよりファウルを取ることもありました」と仰っていたように、本当に様々なことを考えながら笛を吹かれていることは重々承知しているものの、それでも“審判界のファンタジスタ”と呼ばれるくらい想像力豊かな審判が現れるくらいの域まで是非達してもらいたいなあと思っています。
ちなみに世界最高峰と言われる、UEFAチャンピオンズリーグではどのくらいのFK数が1試合にカウントされているのかも調べてみました。数字は以下の通りです。
UEFAチャンピオンズリーグベスト16・1st‐Leg 34.3本
最多FK数:44 オリンピアコス×ボルドー
最小FK数:26 シュトゥットガルト×バルセロナ
UEFAチャンピオンズリーグベスト16・2nd‐Leg 40.3本
最多FK数:48 バルセロナ×シュトゥットガルト
最小FK数:30 レアル・マドリー×リヨン
UEFAチャンピオンズリーグベスト8・1st‐Leg 38本
最多FK数:42 リヨン×ボルドー
最小FK数:35 アーセナル×バルセロナ
こうやって見てみると、J1のここ2節とたいして変わらない数字が出ていて、試合によっては40本を越えるケースまで。まあ、だいたい30本台の後半くらいが1試合平均ということですかね。では、最後に激しいボディコンタクトと、ファウルの少なさには定評のあるプレミアの最新節の数字を見てみましょう。
イングランド・プレミアリーグ第32節 24.2本
最多FK数:32 ウエストハム×ストーク・シティ
最少FK数:14 トテナム×ポーツマス
最少は14本ですよ、14本!チェルシー×アストンヴィラも17本で、全10試合中、30本を越えたのはウエストハム×ストークだけ。まあハッキリ言ってこれは極端すぎる例だと思いますが、こういうリーグもあるということです。ただ、ゲームでの判定基準に一貫性はあるものの、正直プレミアの審判のレベルが高いかといったら大きな疑問符が付きますけどねえ。
選手に“世界基準”を体感してもらいたいという大きな目標を掲げて、判定基準を浸透させようとしていること自体は意義深い試みだと思います。実際、FK数が減少してきたという数字から見ても、選手が今年の基準にアジャストしつつある、ということも言えるでしょう。
ですから、判定を下す審判の方々も一過性の判定基準に囚われ過ぎることなく、ゲームの流れに即した判定を意識することが何より大事だと思いますし、そういう審判の方が増えてきたら、本当の意味でJリーグのゲームも“世界基準”というものに近づいていくのではないでしょうか。
なお、今週のFoot!は、初登場となる玉乃淳さんをお迎えして、“UEFAチャンピオンズリーグ&ヨーロッパリーグ準々決勝1st-Legハイライト”をお送りしますのでお楽しみに!
WORLD SOCCER NEWS「Foot!」
初回放送は毎週金曜23:00-24:00。
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